●The Zen of Palm
Palmのインターフェイス設計はロブ・灰谷という日系二世の方が手がけた。
そのためかPalmの基本は「禅」の思想に大きく影響を受けている。
PDA自体が携帯に押されてシェアを失っている昨今だが、この基本思想の「Zen of
Palm」は今読んでも新鮮である。
そこで今更ながらブログに全文を掲載しておこうと思う。
伝統的な考え方では、パソコンの成功した理由をそのままあてはめようとする。
すなわち、それは「最先端の技術を使う」事であり、「可能なかぎり多機能にする」事であり。「顧客の希望を全てかなえる」事であり、それは結果的に「もっと機能的に、もっとパワーを」要求する事になる。
そして、ここで考えてみましょう。「なぜ、Newtonは売れなかったのか?」
・Stand the question on its head
・Don't get sucked into what the competition is doing
・顧客の要求をフィルタリングしよう
・本当の問題を見つける
・一番シンプルなソリューションを創ろう
「第一の問~世界を両肩に背負うには?」の答えは:
「頭で立ちなさい(Stand on your head)」
【第二の問】聾唖者に聞いてもらうには?
「Newtonの野心的なアプローチ」は、
「PDAに全世界の異なるハンドライティングを理解させようとするもの」であった。
「Palmのシンプルなアプローチ」は
「非常に高性能な人間の脳にハンドヘルド用のシンプルなアルファベットを教える」事だった。
「第二の問~聾唖者に聞いてもらうには?」の答えは:
「彼の言葉で話しなさい」
【第三の問】どうすればゴリラは飛べるのだろう?
PCは「運びにくく」「かさばる」「重い」「ブートに時間がかかる」しかし、PDAよりも「パワフル」である。かたや、PDAに必要とされる事は「ポータブル」「小さい」「軽い」「早い」「シンプル」である。また、PCは一日に触る時間がながく、PDAは一日に起動させる回数が多い。
さらにPDAは機能が多すぎるとその時点でセールスが落ちる。
「第三の問~どうすればゴリラは飛べるのだろう?」の答えは:
「ゴリラとしての要素を取り去るしかない」
【第四の問】マイクロソフトの最大の敵は?
マイクロソフトは"多機能はいつにおいてもベターである"と考えている。
しかし、それは悪循環にしかならない。すなわち、多機能にするために早いCPU、沢山のメモリーを必要とし、それにより大きさも価格もバッテリー寿命もシンプル性も損なわれてゆく。
「第四の問~マイクロソフトの最大の敵は?」の答えは:
「マイクロソフト自身である」
何に注意しなければいけないか?
・マイクロソフトは常に勝とうとしている
・もし、あなたが先駆けているのなら、リードを保て
・もし、我らが彼らをコピーしようとしたら、そのことこそが危険である
【第五の問】ティーカップに山を入れるには?
スウィートスポットは:
サイズ、価格、バッテリー寿命、簡便性、スピード、効率的なメモリー使用、接続性、プラットフォーム、液晶、スタイル
「第五の問~ティーカップに山を入れるには?」の答えは:
「いくつかのダイヤモンドを掘り出し、それをカップに入れよ」
他の土砂を欲しがる人がいるだろうか?
【第六の問】ぐずる(甘やかされた)子供をどうやって黙らせることが出来るか?
・顧客は何を欲しがっているのだろうか?
WinCEが実現しようとしたことは以下のようなものである。
-どこでもWindowsを
ーWindowsの全ての複雑さを掌に
ーハンドヘルドの中のPCモデル
ー沢山のビルトイン機能(ボイスレコーダー、MP3プレーヤー、バイブレーションアラーム...)
片やPalm connected organizerでは以下のことを実現している。
ー可搬性に優れた、使いやすいハンドヘルド
ーシンプルとスピード
ー長寿命バッテリー
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顧客に、彼らが望む全てのものを与えようとしてはならない。(それは彼らのためにならない)
それでは、作った製品が丁度よいバランスに保たれているかをテストする方法にはどのようなものがあるのだろうか。
・ベンチマーク
ー電話テスト
ーNo Wait corsor
・テーマ
ー腕時計のような使い心地、あるいは、それに近くなっているかどうか。(誰しも腕時計を使う(見る)時には何も考えていない。)
・戦略
ー最小のタップ数
ー直感的な作り(少なくとも憶えやすいもの)
「第六の問~ぐずる(甘やかされた)子供をどうやって黙らせることが出来るか?」の答えは:
「耳栓をしなさい」
【第七の問】赤ちゃんに世界を与えるにはどうしたら良いか?
・顧客意識の"ZEN"
ー顧客の要求をフィルタリングする
ー顧客が何をしているのかを学ぶ
ー顧客の本当のニーズを見いだす
ー一番シンプルなソリューションを決定する
「もっとメモリーを」という要求は「効率的なメモリー利用」が本当に求めていること
「キーボード」という要求は「シンプルで簡単なデータ入力方法」が本当に求めていること
「スプレッドシート」という要求は「数値とリストを格納できる場所」が本当に求めていること
「早いプロセッサー」という要求は「データへの素早いアクセス」が本当に求めていること
・顧客はスピードが欲しい
ー早いHotSync技術
ーアプリケ-ションボタン
ーフィンガー・ナビゲーション
ーその場で編集
ー煩雑でないメニュー選択
(以下、かっこ部分のみ同時通訳よりの引用。原文そのまま。)
「例えば、このdateダイアログです。
例えば、デスクトップであれば、ピックリストを使うでしょう。リストをクリックして、それからスクロールして選択するわけです。
この場合、2回クリックしているわけです。つまり、マウスでもってこれをホールドダウンして、リリースする。これはマウスの場合でしたら、あたりまえかもしれませんけれども、このPalmの場合だと2回タップしなくてはならないわけです。え、そこで、例えば下にあるようなリストにしたらどうでしょう。
ちょっと場所を食うと思うかもしれません。スクリーンは小さいわけですから、大きいものは良くないかもしれない。え、しかし、ここでは自分の必要なものだけをぱっと、一回タップすればいいだけです。ですから、ボタンのような形で提示するほうが、ピックリストよりもいいわけです。このようにその月をタップすれば、このgo to Dateのダイアログに行くわけです。スペースは食うようですけれども、このほうがセレクションは早くできるというものになります。」
・機能 vs ソリューション
ーDon't ask:"どうやって、もっと多機能にしようか?"
ーInstead, ask:"ユーザーは何をする事が必要なのだろう?"
「第七の問~赤ちゃんに世界を与えるにはどうしたら良いか?」の答えは:
「赤ちゃんが本当に必要とするものを見つけ、それを与えなさい」
【第八の問】太ったブタを四角い箱に入れるには?
・PalmComputingのUIのゴールは
ーデータへの最小ステップ
ーワンボタンアクセス
ー最小タップ数
ー不明確なアイコンは不必要
ースタートメニューは不必要
ーシンプルでクリーンなインターフェイス
アルバート・アインシュタインはこう言っています。
"Make things as simple as possible, but not simpler."
・シンプリシティは勝つ
ーハンドヘルド製品に沢山の機能を詰め込むのはトレードオフになる
ーバックパックに荷物を詰めるように製品を定義する
ーほとんどの顧客はほとんどの機能を無視してしまう
ーシンプルはパワー
・Power=Getting the Job Done
「遅いプロセッサー」は「ベターパフォーマンス」につながり
「小さなバッテリー」は「長寿命」につながり
「ベルや笛が無い」は「coolest product」につながり
「少ない機能」は「より使える」につながり
「第八の問~太ったブタを四角い箱に入れるには?」の答えは:
「ブタにダイエットさせること」
【第九の問】馬を馬車の後ろに立たせないようにするにはどうしたらいいか?
PCの世界では常にソフトウェアがハードウェアを引っ張ってきた。
しかし、この考え方は"新しいカテゴリー"には当てはまらない。
・電気自動車
ー長所
環境に優しい
充電可能
家庭で充電可能
ー短所
小さい車
高価
十分なパワーがなく、距離も走れない
限られたフレキシビリティ
だから、現在は売れていない。あたらしもの好きの人以外には。
・スウィートスポットにとどまりなさい
あなたの顧客が必要としているものよりも遠く離れてはいけません。
「第九の問~馬を馬車の後ろに立たせないようにするにはどうしたらいいか?」の答えは:
「馬を車の中にいれてしまえばいい」
(以下、かっこ部分のみ同時通訳よりの引用。原文そのまま。)
「我々は違う方法でやっていこう、という事を考えたわけです。
PCのやりかたを、このPalmTopの世界に持っていくののではなく、ソフトウェアのアーキテクチャー、ハードウェアのアーキテクチャー、それぞれ、このバランスをとれるような、スウィートスポットを満たし、お客様のニーズを満たせるようなものにしようとしました。Palmデヴァイスではソフトもハードもこれを実現したわけです。そして、これをライセンシーに提供していこうと思います。このチャンスをデベロッパーにも提供していきたいと思っています。
ここで、まとめになります。
"ZEN"の、つまり、Palmのアプローチを、説明するためには、PCのこれまでの考え方を捨てるということです。
え、そして、シンプルさを「どうき」(注:聴き取り不可)します。少ないほうがいいことがあるわけです。複雑になりますとスウィートスポットが実現できません。また、誘惑に負けて、沢山の機能を入れようと思わないことです。それよりもお客様の心の平安というものを大事にしよう、ということです。コンピューターにどなりつけている人を見たことはありませんか?いらいらしていて、クラッシュしたとか、ファイルのオーバーロードが行われたとか、そういったことで、怒っている人、これは最悪の状態と思っています。Palmデヴァイスにどなりつけているお客様というのは、我々にとって最悪で見たくないわけです。
え、そして、残りの物はいらない、と思っています。他のことはいらない、Palmデヴァイスに入っていない機能もありますけれども、それはそれでいいんです。お客様が本当に欲しいものは何かということを十分に見極めています。で、それ以外のものはいい。ほとんどのお客様のニーズを満足させたのだから。それで、成功していると言えるんです。」
【最後の問】質問はありますか?