昨日、友人の家に遊びに行ってワイワイと話してして、流れで近くにできたというスペインバーへ行ってきた。
目白スペインバルと言う小さなお店。
店にはいると年末のせいか、先客がいっぱいで、やはり予約も入れずにふらっと入ってきれもダメかなぁ?という考えが一瞬よぎる。
幸いカウンターがちょうど2席空いてあり、待たずに席に着くことができた。よかった。
店内は煉瓦造りに木製の調度品、カウンター越しにはたくさんのスペインワインのボトルがライトアップされて輝いていた。
ライティングは全体的に暗め、カウンター席うしろの通り隔ててストーブがあり赤々と燃えた薪で、暖かい雰囲気がでていた。
突きだしが小鉢に爪楊枝の添えられたアンチョビ。量こそ少ないが柔らかく濃厚だが生臭さのないさわやかな酸味がこれからのオーダーの食欲をそそる。
スペインワインはほとんど馴染みがなかったので、比較的ハズレのない白でフルーティなものをとお願いすると、「メニューには載っていないのですが」と前置きしてリオハをだしてもらう。
香り舌触りともによく癖のない味で料理にもよく合った。
カウンターの前にはドーンと生ハムのハモン・イベリコが置かれていて注文に応じて、お姉さんが厳かに1枚1枚、薄~く、薄~く切り分けていた。
「今日は非常によいハモンが入ったのですよ」と店長が嬉しそうに話す。
もちろんオーダーした。
おいしそうなハムを見ると無性にそれをサンドイッチにして食べてみたくなる。
ちょうど焼き肉を食べるとき、一緒にご飯が食べたくなる感覚だ。
それでサンドイッチはありませんか?と聞いたが残念ながら無い。
そこで普通のトーストを頼み、他の料理と取り合わせながらいただくことにした。
本日の煮込み料理をたのんだが、これがまた絶品だった。
牛の内臓の蜂の巣をメインに豆や帆立等と一緒に煮込んだスペインの一般的な家庭料理だそうだ。
聞けば5時間キッチンで煮込んで、さらに5時間薪ストーブの上で煮込むのだという。
煮込むすぎるとかえって歯ごたえが無くなってしまうので、ちょうど良い歯ごたえを出すために何度も試行錯誤したと聞いた。
その甲斐もあり普通は堅くなりがちな蜂の巣が、煮込みのアンデンテとも呼べる、納得の歯ごたえと芯まで染みこんだシチューの濃厚な味わいが楽しめた。
これに豆のホクホク感がよく合い全体としてよくまとまった絶妙な味を醸し出していた。
「じゃがいも召し上がってみますか?メニューには無いんですけど…」と声をかけられる。
カウンターの後ろの方で薪を使ったストーブがたかれていて、アルミホイルに包まれた小さなジャガイモが入っていた。
このジャガイモが「インカのめざめ」という仰々しい名前のものだった。
店員の方がこのジャガイモに関するパンフレットを見せてくれた。
「インカのめざめ」はアンデスなどで昔から食べられてきたじゃがいもの原種を改良して、3年前に登録されたジャガイモで貴重なものだという。
割ってみると確かに古代インカ文明を彷彿させる、黄金色に輝いていた。
ジャガイモの原種の話は昔に聞いていて、いつかは食べてみたいと願っていただけに、思わぬ出会いに心を躍らせる。
小さな卵大のジャガイモを二つに割り二人で分け合って神妙な面持ちで食べてみる。
「皮ごと食べられますよ」と聞き、まずは何も付けずに芋本来の味わいを楽しむ。
さすがはジャガイモの原点ともいえる、甘みがあり凝縮されたクリーミーな味わいだった。
次に付いてきた自家製マヨネーズ「アリオリ」をつけていただく
これがまた普通のマヨネーズとは違ってホワイトソースかと思わせるような白さと柔らかさだった。
これは普通の卵黄の代わりにミルクを使い、昔は殺菌のために添加したニンニクが味のベースとなる。
アリオリをつけていただくインカのめざめが絶妙な組み合わせで、互いに引き立て合った味のシナジー効果を醸し出していた。
ジャガイモの大きさに比べてアリオリの量が多く、残すともったいないので試しにトーストにつけて食べてみた。
するとさわやかな酸味を帯びたガーリックトーストの様な味わいになった。
そこで、それにハモン・イベリコ乗せてガリガリ。
これは旨くないわけがない。
シナジーにシナジーを重ねたトリプルパンチの味わいに完全に参ってしまった。
いやぁ1品1品心のこもった濃厚なディナーでした。
おかげで久しぶりの終電。