私は普段は至って地味で目立たない人間である。
だからとてもとても、カリスマ的オーラとか芸能人的なオーラなどはまったく出せないし、そもそも、それらのスキルは持ち合わせていない。
しかし、一つだけ自由に出せるオーラがある。
それは「近づくんじゃねぇオーラ」である。
商業地などを歩いているととかく呼び込みやらアンケートやら手相占いやら「絵を買いませんか」等々…、とかく煩わしい人たちがまるでトラップのように均等配置で立っている。
そんな場所を子鹿のパンビのように飄々と甘い顔をして歩いてれば、即、捕まってしまう。
そこで、この「殺気」にも似たオーラを発動させてその危険を未然に回避するのである。
このオーラは別に目を合わせる必要はない。
むしろ目は合わせずに全身から漲る冷たい張りつめた空気で近づこうとするそれらの人々に速度低下およびダメージを与える。
ディアブロのナイトメアの防御の兄貴のオーラ「ホーリーフリーズ」オーラによく似ているかもしれない。
攻撃時に冷気ダメージ追加115-120、範囲内の敵に23-24の冷気ダメージ、敵の速度低下52%、半径13.3ヤード
これである程度、その手の手慣れたプロの人たちが近づいてくることは、まずない。
相手もプロだから未然に無駄だと「察する」のである。
以前にも友人と家の近所の観光地を歩いていて、すぐ後ろを歩いている友人にはすぐに声がかかるが、私には声をかけられることは無かった。
まぁ、彼女はかなり人当たりの良い印象の持ち主というせいもあるのだが。
しかし例外もある。
呼び込みの仕事をし始めた新人さんは先輩から「誰でも臆することなく声をかけろ」と言われているのだろう。
成果などに関係なく、まず声をかけると言うことを前提にして来るので、これはまるで「鉄砲玉」である。
私の「ホーリーフリーズ・オーラ」で一時の速度低下効果は確認できるものの、それでもけなげに声はかけてくる。
時々、こういう「冷気無効」や「カミカゼ」な相手がいて、これがとてもやっかいなのである。
そんなときは仕方なく視線を合わせて目からビームを出す。
これは、全身の「ホーリーフリーズ・オーラ」を視線に一点集中させて一気に照射する感じで、かなり強力な無言の「睨み」である。
この攻撃を受けて二言目をかけてきた人は、まずいない。
このダメージは大きいらしく二言目を吐こうとしても何処かうわずっていて押し黙ってしまう。
可愛そうな気もするが、私に声をかけたところで「絶対にそういうことには関わらない」ので、お互いの時間を有効にするためにも致し方がないのである。
それに、そもそもそんな詐欺まがいの仕事に手を染めているのも悪いのである。
むしろ、本人がそれで挫折して堅気の道を歩んでくれればそちらの方が本望である。
しかし、街中にはそんな迷惑な人たちばかりとは限らない。
ティッシュ配りとか試供品配りの嬉しい人たちも存在するのである。
花粉の季節など鼻を良くかむので、ティッシュはとても助かり重宝する。
それらの人の前に来ると、サッとこのオーラを引っ込めてもらえる体勢を作るので、我ながら現金なものだと思う。
こんなオーラでも実用的で便利だなぁと思う。
ただし、外でこのオーラを発現している所をたまたま友人・知人に見られて、その理由を理解されぬまま、二面性のある油断ならない鼻持ちならないヤツだと、人間性を疑われる危険性もあるので乱用は禁物である。
そして何よりも、常用すると無意識に発動しちゃって周りの人が誰も近づいてこなくなる危険性も多分にあるのだ。(もう遅いかもしれないけど…)
やはり春風のような暖かい親近感のあるオーラも出せるようになりたいと思うこの頃だ。
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