HotLineのチャットでの話の流れから昔、読んだ向田邦子さんのエッセイを思い出した。
「無名仮名人名簿」という本に収められていた「キャベツ猫」という題名の短編で、読み直したいと探したが、引っ越しの時に消えてしまったらしい。
しかたがないので、内容を思い出しながら書いてみようと思う。
キャベツ猫は向田さんのところで飼われたシャム猫でキャベツが大好物で、キャベツを見るともうたまらなくて身悶えして啼くのだが、そんな滑稽な仕草の背景にはこんな哀しい話があったという。
その猫が、ペットショップで売られていた時、餌として茹でたキャベツを肉にまぜて与えられていたらしい。
猫は生後2カ月から3カ月で売らないと新しい飼い主に懐かない。それで売れ残りそうになると肉を減らしキャベツを混ぜて発育を遅らせ、血統書の生年月日を偽って売っていたらしい。
この短編には、この猫のその後のたくましい生き方が書かれていた。また、それと対照的な存在のアイス犬も書かれていた。
この犬は金持ちの家に生まれて大事に育てられたそうである。
ほかの家に引き取られたときも乳母、身の回りの品々のひと揃いも添えられて来たというからその甘やかされぶりが窺い知れる。
それで、別の家に引き取られた後も大好物のアイス売りの鈴の音を聞くと鳴いてねだるのだそうだ。
この犬にはたくましさがなく、生きることに対しても執着がなかったらしい。
やがて病気になり、周りが一生懸命になって飲ませようとした薬も吐き出し、「もう、いいじゃないですか」という風にこちらを見ていたという。
結局、キャベツ猫の方はたくましく長寿に生きて、アイス犬の方は短命で終わったらしい。
どちらが幸せだったかそれは判らないが考えさせられる内容だった。
ちなみに「キャベツ猫」の書き出しは、「犬や猫にも食物の好き嫌いがある。」だった。
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