若い頃、貧乏をして電気代が支払えずに何度か電気を止められた苦い経験があるので、稼働に電力が必要な道具という物にはどこか懐疑的である。
冷蔵庫も洗濯機もない生活をしていた頃、月の電気代は1200円くらいだったと思う。
それが、世間並みに冷蔵庫を購入した後、月の電気代が3000円台にふくれあがった。
なんだか理不尽な気がして「お前のために稼いでいるんじゃない!」と、冷蔵庫を恨めしく思った経験がある。
そもそも、中に入れるべき食料などほとんど無く、ワインを冷やすくらいだった。
今でこそ家電製品に囲まれて、便利な生活を送っているが、もし電力が止まったら、という不安感は今でも持っている。
私のような苦い経験でなくても、趣味のキャンプであえて不便な環境に身を置いたりする人、停電などで不便を経験した人は共感してもらえるのではないか。
そういう他エネルギーに依存する生活への不安から普段から余計な機能のないシンプルで故障が少なく、そしてあまり電力を消費しない物を選んで購入している。
メーカー側は商品の差別化に付加価値を付けようと様々な機能を追加していて、これが基本機能にまで悪影響を及ぼす場合がある。
どうせ使わない(使えない)要らない機能ならバッサリと捨てて、シンプルなものにしたほうが長く付き合えるのである。
コンピュータに関して言えば、私がデスクトップ型ではなく、ノート型を好むのも蓄電が可能な事と無関係ではないだろう。
そもそも省電力で動く設計になっているし、とりあえずどこかで電気をもらえば1時間くらいは動いてくれる。このとりあえずという安心感は嬉しい。
そこから、さらに考えて、機械式のコンピュータを夢想したことがある。
時計のような精密機械で動き、ディスプレイはON/OFFのモノクロのみというものである。
しかし、いくら精密でも機械部品だけでコンピュータを構成することは無理だろう。
現実的には極小の消費電力で稼働するゼンマイ発電装置を備えたコンピュータとなるだろう。
あり得ないような話だが、実際に昔、AppleがNewtonというPDAを作っていた頃、電力供給のままならない発展途上国の教育市場向けにこぶし大のゼンマイ発電装置もセットで売り出されていたそうである。
そのPDAはeMate というキーボード装備のラップトップ型だったので、これこそまさにゼンマイ駆動のコンピュータと言える。
最近ではMITの Media Lab から教育用に100ドルPC が発表された。
横のレバーのような物を最初マイク端子かと思っていたが、なんとこれがゼンマイ用のクランクなのである。さらに折りたたむと電子書籍リーダとしても利用できる。
「世界中の子供たちすべてにラップトップを」という壮大にして夢のあるプロジェクト。この取り組みにはとても共感できるし、これについて書きたいことは山のようにあるのだが、長くなりそうなので日を改めることにする。
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