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七人の侍

  ここのところ、昔の名画を家内と一緒に観ている。
  実は家内は黒澤映画を含むほとんどの名画というものを観ていなかったようである。
  そのくせ、これは観ていないだろうなというマイナーな映画をちゃっかり観ていたりするので侮れない。

  それで日本人なら黒澤映画の「七人の侍」ぐらいは観ておくべきだろうと先日と昨日の2回に分けて鑑賞した。
  もし海外の人と会話の中で「世界のクロサワ」の話題が上がった時に代表作くらい見ていなければ母国人としていささか恥ずかしいと思うのだ。

  昔のモノクロ画像で音声も良くないけど、訴えたい心はしっかりと伝わる。

 名作ならではで名シーンや名台詞も多い。

「人を守ってこそ自分を守れる・・・己のことばかり考えるやつは、己をも滅ぼすやつだ!」(勘兵衛)

 この台詞のシーンを初めて観た時に涙が出て止まらなかった。

 昔の映画は時間が長い 途中で休憩がはいる。

 また、名作だけにその後に語られる逸話も多く、作品中の引用元も興味深い。

 前述「本朝武芸小伝」の塚原卜伝のエピソードから引用されているという。

 

・・・勘兵衛の参謀ともいうべき五郎兵衛は 不意打ちを試される。勝四郎が入口に隠れ、入って来る五郎兵衛に木刀で襲いかかろうとするが、彼はそれを察知、有名な「ご冗談を」と見抜く。これは塚原卜 伝の事跡にあり、自分の家督を三人の子に譲るとき、木枕を自分の部屋の暖簾の上に置いて、暖簾をはねると頭の上に落ちる仕掛けをしてから息子たちを呼ん だ。すると嫡子は「見越しの術」でこれを見つけ、枕を取り除いてから部屋に入った。次男、三男はそれを見抜けず、とっさに身をかわしたり、抜刀して宙で 切ったりした。卜伝は事前に見抜いた嫡子に家督を譲ったという話である。
(都築政昭著 黒澤明と『七人の侍』”映画の中の映画”誕生ドキュメント より)



・・・七人の侍が村へ乗り込むでしよう、す ると村人が全部戸を閉めてしまつて、白眼でじつとみてる。本当だつたら、ここで侍は怒つて帰つてしまうところなんだ、気位も捨てて折角来てやったのにその 反抗的な態度は何か、と言つてね。それならどうして侍を引きとめるか。さあそれを考え出すとわからない。もう本は一歩も前へ書き進めないのです。(中略)は じめ、侍のうち三船君のやる役は久蔵だったんだ。武術一点張りの男でね、ふだんは黙つているが、いざ合戦となるとものも言わず強さをみせる…。だが、今言 つた個所あたりでグッと筆が詰つてしまつた時、僕達は、こりや何かが書き足りなかつたんじゃないか、ということに気がついた。何だろう?カードは一応揃つ ているように見える。エースもあれば、キング、クイン、ジャック、皆あるような気がする。(中略)その時判つたんだ、これはジョーカーがなかつたんだ、と。ジョーカーで侍と百姓を繋がなくてはいけなかつたんだ。三船君はそれになるべきだつたのだ-菊千代という人物はこうして生れたんです。
(映画の友1953年12月号「黒澤明大いに語る-『七人の侍』の構想と演出」より)


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