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年頭の挨拶

 正月になるとほとんどの友人はみんな故郷へ帰ってしまう。
 故郷を持たない私は特に帰るところはない。毎年、この頃が一番寂しい。
 三賀日には会えず、年頭の挨拶もできない。1月中頃に会うのだが、その頃ではもう、「明けましておめでとう」などとは言えない。
 新年になって初めて会ったわけだが、最初の挨拶が何となく宙に浮かんだまま、うやむやに話を始めてしまうこともしばしばだ。
 「よぉ、ひさしぶり」というほどひさしぶりの再会じゃないし、「実家どうだった?」なんて言うのもいまいちしっくりこない。
 「寒いねぇ」なんていうのも何か大事なことをおざなりにしたようで、落ちつかない。
 何かよい挨拶がないかと毎年考えるのだが、未だにこれといったものが見つからず、今年も「やぁ、ごにょごにょ…」「おぉ、ごにょごにょ…」といったやり取りになりそうだ。

 新年なので久しぶりに礼服に袖を通す。
 思えばこの礼服は成人式の時にあつらえたものだからかれこれ何年になるだろう?
 黒のダブル、それほど高価なものではない。
 年に数回しか着ないし、体型もほとんど変わっていないので、型くずれや色あせも全くないので今でも全然OKなのだ。
 しかし好きな店のものじゃないし、もらい物なのでお仕着せの感があっていつかは新調しようと思いつつ今に至る。
 来年こそちゃんと自分で新しくあつらえたものを着たいと心に誓う。

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