何にしてもそうだが、気に入った物を見つけるとまずはそれをいじくり回して、その物の限界を見極めることをする。
限界が見えて初めて安心して落ち着いた気持ちで取り組める。
映画「K-19」でハリソン・フォードが扮する艦長、ボストリコフ大佐が処女航海の新鋭潜水艦負荷をかけ、艦そのものとクルーの能力を限界ギリギリまで酷使して、見事ミサイル発射実験に成功したシーンがある。
その中の「限界を見極めて初めて安心して実戦に臨める」といった趣旨の台詞にとても共感を覚えるのである。
だいたい「何でも出来ます」なんて嘘くさいキャッチフレーズほど信用の置けない物はない。
逆にコレとコレは出来ないけど得意なコレならば他には負けないという割り切った物の方信用がおけるし本来の意味で実用的な物が多い。
またそういう物の方が魅力的なのだ。
Palmという弱小のデバイスはOS4の頃は動画は再生できないし、テキストは32kまでしか扱えない。Jpgの画像はそのままでは表示できないとスペックから見ればまるで何も出来ないように映るが、実はその代替えとして驚くほどのバッテリ稼働時間、どこでも瞬時に道具が起動、安定したOSと、外で使うためには当たり前の機能が当たり前に備わっている。
逆にWinCEなどはスペック的に見れば何でも出来そうに見えるが、実は電池の持ちが悪かったり、道具の起動も瞬時というわけにはいかなかったりと本来、モバイルとして備えなくてはならない当たり前のことを犠牲にしている印象がある。
Palmを知ってすぐに、そのスタンスにすっかり気に入ってしまった。
早速、限界を見極めようと色々調べてすぐに膨大な量の個性豊かなソフトの存在を知り、あまりの量の多さに一時期途方に暮れるほどであった。
しかしそのほとんどを試したり色々実験してみて、出来ることと出来ないことの限界をわきまえた上で結局は本当に当たり前の使い方をしている。
それくらい基本機能が既に完成の域に達しているのである。
限界の見極めは他の道具でも同様である。
デジカメなどやはり色んなシチュレーションで撮って初めてダイナミックレンジや解像度の限界を理解できる。
そのカメラの特性を理解した上で限界ギリギリのところ、少し余力を残した当たりで使いこなすと結構良い絵が撮れる。
だから、新商品が出ても嘘くさいコピーにはまず疑って掛かることができる。
売り文句の新機能が今持っている機材でもちょっと工夫すれば同様に実現できることもよくある。
そんないらない機能より本来の写りに対して旧製品の限界を楽々越えてしまうような場合に初めて買い換えを考える。
でもなかなかそういうブレークスルーは短期間には実現しない。
大概のメーカーは基本機能は代わり映え無くその代わりに余計な機能を付け加えて新製品と称することが多い。
メーカーに惑わされて一喜一憂することなく、今ある資産を果たして限界まで使い込んでいるか見直す姿勢は大事であろう。
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