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音楽その2

 音楽に素養がない原因の一つには家庭の環境があるだろう。
 幼い頃の実家にはステレオで音を再生する装置は存在せず、すべてモノラルのあまりにささやかな機器のみだった。
 両親とも楽器はもちろん、音楽にもあまり興味がなかったようである。
 ポータブルのレコードプレーヤーがあったが、そもそもレコードの数が少なかった。
 特に貧しい思いはしていなかったので、ステレオ装置やレコードが買えなかった訳じゃないだろう。
 音楽よりむしろ両親とも絵を描くことは好きだったし、カメラの方は父親はブローニーの中判(ゼンザブロニカEC)に日コールのレンズを、母親はコニカFPという一眼レフにヘキサノン52㎜/f1.8のレンズを付けてよく写真を撮っていた。
 そのため、自分自身の幼い頃の写真は他の家庭に比べて多いと思う。
 恐らく、左右から別々の音が出ることなどにあまり興味がなく、どちらかというと、レンズの描写とか、色乗りとか、どちらかというよビジュアル寄りの環境だったのだろう。
 そんな環境に育ったので、中学生になって初めてウォークマンで音楽を聴いたときには目から鱗が落ちるくらいの衝撃だった。
 左右から別の音が出るだけで、まるで頭の中で生き生きと音楽が奏でられるような錯覚を憶えた。
それで高校時代にバイトして自分でステレオ装置の購入して我が家にもようやく文明開化となったわけである。
この話は長くなるので今回は省く。

実は私にも一つだけ弾ける楽器がある。
高校時代に縁があってブラスバンドに入ったからだ。
楽譜が読めなくても一から教えてもらえるということで、とりあえずやってみることにした。
楽器を選ぶ段に吹奏楽からいくつか候補があったが、クラッシック音楽が好きだった私にはサックスはちょっと派手すぎるし、かといってフルートは女性の吹く物という印象があって、結局、無難なクラリネットに落ち着いた。
最初は音を出すだけでも一苦労だった。
練習の成果で何とか一番低い音から高い音まで出せるようにはなった。
いまでも唇にリードの感触は憶えている。

音は出たものの音譜が読めないのでもっぱら指で憶えるしかない。
憶えたところでリズム感がなく、周りにもだいぶ迷惑をかけたことだろうと思う。
それでも3年くらいは続いた。
おかげさまで今でもクラリネットなら何曲かはソロで吹ける(と思う。)

でも、クラリネットはお借りした物なので辞めるときに返して今は手元にない。
何か手元に置けて気軽に弾ける楽器が欲しいところだ。
そういえば、前に池袋の西口広場で、たしかドヴォルザークの新世界より「ラルゴ」をリコーダーで演奏していたのを聞いたことがある。
リコーダーと言っても小学校の時に使うような縦笛の高級版ことである。
見事な演奏でしばらく立ち止まって聞き惚れていた。
ああいうお手軽な物でも良いのだろう。

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