昨日、ようやく以前から気になっていた村上春樹の短編を映画化した「トニー滝谷」を観た。
好きな短編だったことと、主演がイッセ−尾形だったので期待していたが、やはり村上作品の映像化は難しいと感じた。
理由は色々あるだろうけど、個人的に思うに村上作品の多くはディテールを細かく描写しながらも、読者それぞれにそのイメージを任せる懐の広さが人気の秘訣のような気がする。
なので、読者は作家の描写の助けを借りてイメージを起こしやすいのだが、当然ながらそれぞれの経験や知識に基づく異なるイメージ を強く描くので、他人のイメージを映像化してもなかなかマッチした物にならず違和感が残るのだろう。
今回の映画も監督のイメージ通りには描かれているのだろうけど、私が短編を読んだ時に思い描いた物との違いでどうも納得がいかないかった。
また、原作の文章をナレーションとして使用してその一部を役者に喋らせていた。 それ自体は面白い試みのように感じられたが、描いた描写も原作をすべてなぞった物ではなく、ところどころ省略されていて、その取捨選択の仕方も自分の記憶にとってイメージを描く上で大事だと思える部分が削られていた。
どうせなら、ナレーションで全てを朗読の形にして、流れるイメージの中で、台詞を役者に喋らせた方が未だ良かったのではないかと思える。
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