2006年10月01日

●シルバーホワイト

鉛白(ヒドロオキシ炭酸鉛)
鉛白の古くからの製法は、鉛の薄い板を酢と馬の寝藁に作用させて作った物である。
数週間後に鉛板の上に白い結晶状の粉がふく。
これが鉛白(白鉛)である。
現代の製法はもっと速く(被膜力が落ちるが)、直接に酢酸と科学的に純粋な炭酸ガスを作用させる。
上質な絵の具に用いられる鉛白は炭酸によって塩基性酢酸塩を沈殿させて作る。

この白はきわめて緻密で堅牢性が高い。
しかし、硫化ガスに触れると黒ずむ。
したがって他色(特にレモン・カドニウム黄と朱色バーミリオン)との混色は避ける。

この白色顔料は有毒である。
粉末状の時は特に注意を要する。
取り扱い後は石鹸で良く手を洗うことが推奨される。

●ジンクホワイト

亜鉛白(純粋な酸化亜鉛・亜鉛華)
1787年フランスの科学者クールトワ(Courtois)によって開発された亜鉛白は、1845年になってフランスのルクレークによってはじめて工業的に量産されるようになった。
油彩画用は1850年から。
粗鉱のままから、あるいは精錬された金属から、作られる。
後者の方法による方がすぐれた白色顔料が得られる。

何を混ぜ合わせても極めて安定した顔料。
密度が小さいことから、不幸にして被膜力と堅牢性に関しては鉛白(シルバーホワイト)に劣る。
乾燥性は中程度。

Winsor & Newton社
品名 : チャイニーズホワイト
含有化学成分 : Zinc oxide

●チタン白(酸化チタン、科学的に純粋)

最近の発明になるチタンは、19世紀に作られた顔料の中で最良のものに列せられている。
この白色顔料は、一般にノルウェーで産する。
チタン鉄鋼(酸化鉄と酸化チタン)を大量の硝酸に浸して採取される。
ついで塩化カルシウム溶液で沈殿させ、こうして得られた酸化チタン溶液を冷却炉の中で熱する。
被膜力が大きく安定性が高く、堅牢性が大きい。乾燥性も高い。
この顔料は必ずしも純粋なままで市販されているとは限らない
この白色顔料は、科学的に純粋な酸化チタンによって構成されていなければならない。

Winsor & Newton社
品名 : チタニウムホワイト
含有化学成分 : Titanium dioxide

●ヴァーミリオン(硫化水銀)

ヴァーミリオン(朱色)は乾性と湿性の2つの方法で作られる。
乾性は硫黄と水銀を弱火で融かす方法で支那朱と呼ばれる。
湿性は水銀、硫黄、苛性カリ溶液を用いる。

この色の乾燥性は優れているが、光に当たると黒変する。
恒久ヴァーミリオンと名付けられた物も同様である。
シルバーホワイトとの混色は避けること。

辰砂(天然硫化水銀)
昔の人が使った硫化水銀は、天然のヴァーミリオンであったが、これは昔も今もイタリアのある採掘地から採れる。
天然の硫化水銀によるこの朱色が現在までよく残っているのは絵の具の用い方が良いの為である。
中世の画家は、常にヴァーミリオン(天然硫化水銀)を樹脂を含んだニスで他の絵の具から隔離している。さらに光の直接的な影響を上からガランス(茜色)をグラッシして防いでいる。

天然硫化水銀は直接日光にある時間晒すと、人工ヴァーミリオンと同様に黒ずむ。
天然でも人工でもヴァーミリオンは色調の鮮やかさに利点が見られるが、光による褪色性と、混色の注意が必要なため、安定したカドニウム系の赤色を薦められる。

●カドニウム系顔料(硫化カドニウム)

1817年ストロマイヤーとハーマンによって発明された(製造法は科学者ジャネットの貢献による)カドニウム顔料からは、それまで画家のパレットに欠けていた黄色、鮮やかな赤の色相が得られる。
これらの顔料は、カドニウムを含有する亜鉛鉱から得られる。
この鉱石を焼くと、カドニウムの豊富なカワが得られる。
これは異極鉱(カラマイン)といって、これから色のついた粉末が採取される。
この顔料は光にきわめて強く、混色しても安定している。
乾燥性は十分(赤のみ中程度)
堅牢性の点では明るいカドニウム黄(特にレモン・カドニウム)にはしばしば過剰な硫黄が含まれているためシルバーホワイトと混色を避けるなどの注意が必要である。

Winsor & Newton社
品名 : カドニウム・イエロー・カドニウム・オレンジ
含有化学成分 : Cadmium zinc sulphide / Cadmium sulphoselenide

品名 : カドニウム・レッド
含有化学成分 : Cadmium sulphoselenide

●濃コバルト紫(燐酸コバルト)

この紫は比較的新しく発明され、紫の色相の中では唯一堅牢性が高い物である。
これは炭酸コバルトから作られる。
光に対して安定しており、混色にも耐えうる。

淡コバルト紫(砒酸コバルト)
明るい紫は、光にも混色にも安定しているが堅牢性は濃コバルト紫よりやや劣るとされる。

Winsor & Newton社
品名 : コバルトバイオレット
含有化学成分 : Cobalt phosphate

●オーカー

天然のままの顔料は、焙焼することによってもっと色の濃い暖かみの強い顔料に変わる。
イエローオーカーを焙焼するとレッドオーカーになり、ローシャンナーはバーントシェンナーにかわる。
天然(ロー)のままの土や焼いた(バーント)土(酸化鉄)をベースにした顔料からは、いちじるしく堅牢な絵の具が得られる。油で練ると、優れた乾燥性を示す。

ローアンバーとローシェンナーの使用には注意が必要である。
前者は酸化マンガンを含んでおり、後者は練り合わせにひどく油を必要とする。
ただし、無機質の土(酸化鉄をベースとする)は、完全な堅牢性をもったものだといってよい。

無機質の土を有機質の土(植物性の物質が分解した、テール・ド・キャッスルやテール・ド・コロニューなど)と混同してはならない。

Winsor & Newton社
品名 : ローシェンナー・バーントシェンナー
含有化学成分 : Transparent synthetic iron oxides

品名 : ローアンバー・バーントアンバー
含有化学成分 : Natural iron oxide

品名 : イエローオーカー
含有化学成分 : Natural iron oxide

●ネープルス黄(アンチモン酸鉛、硫酸カルシウム)

ネープルス黄の起源は、古代カルデア人までさかのぼるといわれる。
彼らの製法は長い間知られていなかった。
コフィニエによれば、もっとも古い製法は、鉛白、硫酸アンチモン、焼明ばん、塩酸アンモニウムを溶けるまで熱するという、方法であったと考えられる。
チャンニーノ・チャンニーニはこの黄色をジャロニーロ(giallorino)とよび、「いつまでも褪せない」といっている。
よく準備されたときにはすぐれた特性を発揮する。乾燥性も高い。
鉛を含んでいるので混色は避けるにこしたことがない。

Winsor & Newton社
品名 : ネイプルスイエロー
含有化学成分 : Titanium dioxide / Chromium titanate

●マース系顔料(酸化鉄)

天然のままないし、焙焼した土を科学的により純度の高い物質におきかえる顔料は近年発明された。
その大部分は着色剤(酸化鉄)を中性的な体質剤(アルミナ)に吸着させて作る。
天然の土よりも鮮やかで、色乗りがよい。
堅牢性や乾燥性も良質の天然の物と変わりがない。

マース系の顔料には、マース黄、マース橙、マース褐、イギリス赤まで他種類存在する。

Winsor & Newton社
品名 : マースブラック
含有化学成分 : synthetic iron oxides